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シオリの家に向かう道は、前回の「のと里山海道→能越自動車道」とは違うルートだった。彼女の軽トラは珠洲道路(県道303号)から国道249号に出て海沿いを走っていく。なかなかのワインディングロードだが、シオリの運転は全く危なげない。シフトダウンもエンジンの回転を合わせているので、実にスムーズだ。こいつ……夏の頃に比べても、随分運転上手くなったな。
「ほら、あれ」
シオリが左の海を指さす。海の中に、木の柱を組み合わせて出来た、謎の建造物があった。
高さは10メートルくらいだろうか。上を向いた四角すいの形をした骨組みだが、それぞれの辺に当たる柱が頂点の位置よりも若干長いので、頂点からさらに少しだけ放射状に広がっている。そこに板が置かれていて、その板に人が座っている。さらにその上に、骨組みだけのスカスカの天井があった。日よけにしても雨よけにしても全く機能しているようには見えない。
また、補強のためか、人が登るためのはしごの役割を果たすためなのか、四角すいの一つの斜面に、横になった木材が八十センチ間隔くらいで柱に縛り付けられ、上から下まで並んでいる。
「何? あれ」
「ボラ待ち櫓やよ」と、シオリ。「昔はボラを捕るためにぃ、あれで漁師が上から見張っとったんやって。でも今では全く使われとらんけどね」
「え、けど人いるじゃん」
「あれ、人形」
「……マジか」
俺は拍子抜けする。
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