2

1/4
前へ
/56ページ
次へ

2

「相変わらず、軽トラかよ……」  のと里山空港に降り立った俺を出迎えたのは、冬の制服を纏ったシオリだった。そのまま駐車場に連れて行かれた俺は、そこで彼女の愛車(?)、白のスズキ・キャリィとも再会を果たしたのだった。 「いいがいね」少し口を尖らせながら、シオリが言う。「もう畑も終わったしぃンね、今この車に乗るのはウチしかおらんげん。ほやさけウチのマイカーも同然や。ほらぁンね、早う乗りまっし」 「分かったよ」  全く、高校生の分際でマイカーを所持しているとは……贅沢なヤツだ。俺も車が欲しくないわけではないが、東京に住んでいるとあまり必要性を感じない。だけど、こんな田舎では必需品なのだろう。  俺は助手席に座りシートベルトを締める。それを見計らってシオリが車を発進させる。相変わらずスムーズな運転だ。マニュアルなのに全くシフトショックが感じられない。  夏に比べれば日差しは随分柔らかくなったが、これだけ天気がいいとさすがに少し暑い。山々に生い茂っている木々はまだ色づくほどではないが、真夏に見た、輝くばかりの緑の瑞々しさはすっかり失われていた。 「……あれ? 道、違くないか?」  空港の高台を降りてから、いきなりシオリは車を彼女の家と逆方向に進めていた。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加