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「ウチ、図書館に行って調べてん。ほやけど……良く分からんかってんよ。その当時の記録はなんも残ってないげん。一応、明治28年4月と明治38年11月の2回、旧七尾町内は大火に見舞われた記録があるげんね。どの辺りが燃えた、っていう地図も残っとる。でもぉンね、犠牲者数とかは分からんげん」
「記録がないのか?」
「どうもそうみたい。ほやけどぉ、そもそもぉンね、石崎奉燈祭が始まったのが明治22年やろ? その火事は二つともその後に起こっとれん。しかも石崎やなくて七尾町の火事やしぃ、なんも関係ないんでないかなあ」
「……そうなのか」
確かに、明治時代の資料となると意外に残っていないものなのかもしれないな。その当時は新聞のようなメディアも発達していなかっただろうし。
「うん……それにね、お父んにも聞いてんけどぉ、昔ってぇ、今と違ごてどこでもかなり当たり前のように火事が起こっとったんやって。しかも家が藁葺きやったりして、すごく燃えやすかったみたいねん。だからすぐに延焼してぇ、大火事になっとってんて。ほやさけぇ、火を鎮めるためのお祭りってぇンね、石崎奉燈以外でもいろんなところで行われてたみたいやよ」
「へぇ……」
そうなると、過去に石崎で起こった火事も、一概に「謎の存在」が引き起こしたものとも言えない、ってことか……
でも、やっぱりすっきりしない。どうしても「謎の存在」に確かめたい。それが、ソイツの仕業だったのかどうか。
「早速今日、西宮神社行ってみる?」
俺の考えを見抜いたように、シオリが言った。
「ああ、もちろんだ。時間は……前回の時と同じくらいがいいのか?」
「たぶんね。ウチ、また巫女装束着てくさけぇ、楽しみにしとってね」
シオリはそう言って、ニヤリと笑う。
……。
まあ俺も、それが目当てでここに来た、ってところも……無きにしも非ずではあるのだが……
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