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第1章
ユキヒロくんへ
先日送った手紙は、読んでいただけましたか?
東北地方の太平洋沿岸の小さな農村に、ひそやかに建設されたハンセン病療養所…
小学校の新米教師だったわたしが、村の村長=「森」の主から依頼され、療養所の子どもたちに勉強を教えることになったこと。
そして、その療養所で掃除婦として働いていたトミエさんから聞いたある姉妹の悲惨な出来事は、以前お伝えしたとおりです。
この小さな農村に流れ着いた姉妹が、村の村長=「森」の主の庇護のもと「森」の中で暮らすようになりましたが、黒く長い髪の美しい姉が、村の有力者である地主の息子ら不良グループに強姦されて、田園の中心の盛り土に聳える「一本松」で首吊り自殺をしたこと。
しかしながらこの村の有力者は、その権力を行使し、強姦を犯した息子たち不良グループに、何のお咎めも及ばぬように計ったこと。
しかしこの事件は、さらに続きがあったのです。
療養所でトミエさんがとくに親しくしていたひとりの中年男性患者が、その姉妹の妹(ハンセン病患者らしい)とつながりがあったということ。
それを聞いてわたしは、左目の視力が失われた彼から、その後の「森」をめぐるもうひとつの出来事を聞かせていただきました。
不自由な左脚を摩りながらも、しっかりとした口調で話してくれた驚くべき新事実を…
それも信じがたい話しではありますが、けっしてわたしの作り話しではなく、現実にあった出来事です。
その中年男性患者が、なぜ左脚が不自由になり松葉杖を使うことに至ったかを踏まえて話してくれたその話し…
ユキヒロくん
わたしは風の便りに、あなたが小説を書き始めたという話しを聞きました。
いつの日か、この事実をあなたの想像力を踏まえて描いて欲しいという願いとともにお伝えいたします。
「森」のほんの小さなまことの戦いを…
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