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纏わりつくような暑さは、むしろ心地よかった。
分厚い緑の葉を噛み砕く。しゃりしゃりぱりぱりとひっきりなしに、柑橘の葉をふちから噛んで嚥下し続ける。それはまるで押し込み続けているようであった。爽やかな香りと音が散る。
こんな音を普通の人間は注意して聞かないだろう。僕が何千、何万回とした咀嚼の音は人間にしたら取るに足らない、芋虫が立てる音なのである。
空腹だ。空腹だ。休むこともできず僕は頭を振り続け、名もわからぬ柑橘の、濃い緑色を不格好な体の中に押し込み続けるのだ。
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