纏わりつくような暑さは、むしろ心地よかった。

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 葉の影で夜を越える。ごうごうと風が鳴る。なんだか厭な予感がする。僕は葉を齧りたくて仕方ないのをこらえ、そっと葉の影に入った。  予想通り、程なくして雨が降り始めた。これは非常に危険だ。  僕が孵化したばかりのころ、何が恐ろしいって雨が恐ろしかったのだ。目の前で巨大な雨粒に打たれた仲間は滴の中できりもみしながらあっと言う間に落ちていった。落ちたあと、どうなったかは知らない。溺死するか他の虫に食われたかというところだろう。僕は葉の影、枝にしがみついて必死に耐えたのだ。  恐ろしい轟音に身を縮み上がらせながら、口から吐いた糸で足場を補強し耐える。あの日も今日も同じであった。いや、体が大きくなった分隠れるのが大変であった。だというのに、起きていると空腹が襲ってくる。ひもじい、ひもじい。冷たい雨粒が葉に当たって、するりとこぼれたひとかけらで必死に口を潤す。溜息は顔でなく、足の付け根から抜けていった。  芋虫が溜息! 学会で発表したらどれだけ注目を集めるだろう!  僕は恐ろしい夜と雨が去るのをただ待つしかなかった。
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