夢は潰えて

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夢は潰えて

 じゃくじゃく、しゃりしゃりと柑橘の葉を噛み砕くような音が聞こえた。僕はのろのろと頭を上げる。  目の前には透明な虫かごが一つ。名もわからぬ柑橘の葉と共に取ってきた蛹が中に入っている。アゲハの蛹だ。僕は思い出す。羽化しそうな気配の蛹を見つけて採取してきたことを。眠っている間に見た夢はこの幼虫の半生のような、嫌に生々しいものだった。  しかし、おかしい。僕が取ってきたのは蛹。柑橘の葉を食むような大きな幼虫は連れてきていない。音を探り、虫かごの中に目を走らせる。  蛹にぽつりと穴が開いていた。その穴は食む音と共に大きくなっていく。震えながら目が離せなくなった僕。あの痛みを思い出していた。  蝶とは似ても似つかない、おぞましく攻撃的な姿の、飴色の蜂が、ぶぅんと音を立てて穴から飛び出した。  その羽ばたきからは、死のにおいと音がした。枝には空っぽの蛹が残されているだけである。
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