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「カバンが、ココロくんのカバンが……パンパンに膨らんでた」
やはりそうか。ミオのカバンを持ち去った犯人はココロだ。
「はい。ミオちゃんのカバンを盗んだ犯人は――僕です」
教室が静まり返る。驚きや困惑、それ以前に皆唖然としていた。
そんな中、シノが切り出す。
「コ、ココロくん。じゃあ、ミオのカバンは?」
ココロは、申し訳なさそうな表情になり、少しの沈黙の後、口を開く。
「……カバンは燃やしました」
ココロの言葉を聞きミオから涙があふれる。
その涙はおそらく、カバンを失った悲しさよりも友人に裏切られた悔しさからなのだろう。
すると、南先生が、ココロに尋ねる。
皆が忘れていた最初の前提。
「ちょ、ちょっと待ちなさい! 緑川先生に聞いたけどココロくん。あなたが最初に言ったっていう『何故』がわからない!ミオちゃんに恨みなんてあったの?」
流石、南先生。これで真実に、確信に迫る。
ココロはシノに優しげな表情でこういった。
「シノちゃん。これから、ミオちゃんにとってもっと辛い話をしなくちゃいけない。だから、ミオちゃんをお願い」
「……うん。わかった」
シノはココロの表情をみて悟ったのか、ココロの願いを受け入れ、ミオの肩を抱き引き寄せた。
「ミオ。大丈夫だから、ココロくんの話最後まで聞いてみよ?」
「うん。」
ミオは涙を流しながらも、頷く。
そして、ココロの話は最後の段階に入る。
「お待たせしました。南先生の質問に答えると、僕はミオちゃんに恨みはもっていません。むしろ仲のいい友達だと思っています」
「じゃあ、なんで」
ココロの答えに対しさらに質問をぶつける南先生。
「はい。ですから、ミオちゃんに謝る前に最後の話をしなければなりません」
ココロは一拍置き、続ける。
「一昨日、一匹のウサギが逃げました――」
私は、そこまで聞くと席を立った。
「緑川先生どうしたんですか」
南先生が私に話しかける。
「少しトイレに。南先生はココロの話、ちゃんと聞いてあげてください」
「え、あ、はい。もちろんですが」
「では」
そして、私はその足で職員室へと向かい辞職願をデスクの上に置き――学校を去った。
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