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そうか、もうホームルームの時間になったのか。
クラスが騒ぎ出す。
昨日のカバン紛失の件について担任と副担任でホームルームの時間を使い話をする予定だった。
しかし、せっかくここまできたのだ。邪魔されるわけにはいかない。
「南先生。ホームルームは中止です。ここに座ってください」
私は今日休みの生徒の椅子を借り、自分の座っていたスペースの横に置いた。
「でも、緑川先生。こんな犯人捜しみたいなこと!」
「生徒の自主性を尊重しましょう。座ってください。責任は私がとります」
女性にこんな顔をするのは初めてだが、目を細め南先生を威圧する。
「わ、わかりました」
私の真剣な表情が伝わったのか、南先生はしぶしぶ私が用意した椅子に座った。
「すまないココロ。続けてくれ」
私は、ココロに話を進めるよう促す。
「では、続けます。『何故』に続き今度は『いつ』、時間について考えましょう。これで犯人が絞れます。ミオちゃん、カバンを置いてからどこに?」
「飼育小屋だよ? わたし飼育委員だし、ウサギに餌をやりに」
「どれくらいの時間いたのかな?」
「ええと、餌は飼育小屋の横にあるからそんなに……でも、ウサギたちの様子も見てたから、二十分くらいかな」
「カバンを置いたのは何時頃かわかる?」
最後のココロの質問に対しミオは口ごもる。
そこで、シノが手を挙げた。
「あ、わたし、わかるよ! あのあと塾だったから時計みてた。四時二十分!」
それを受けココロは続ける。
「つまり、犯行はニ十分から四十分の二十分間ということになります。誰かこの時間帯、下駄箱でなくともその周辺にいた。という方いませんか?」
ここで、またクラスがざわめく。お前見た?いや。お前は?など生徒内で問答が続く。そんな中、一人の男子生徒が手を挙げた。サッカー部所属のサトシだ。
「たぶんオレいたよ。部活で運動場に行ったんだけど教室にスポーツタオル忘れちゃって、すぐ教室に向かったからそのぐらいの時間だと思うんだけど」
「ありがとう。じゃあ、質問するよ? 下駄箱近くを通った時誰か見てない?」
ココロはサトシに質問する。
これで犯人はわからなくとも、真実に近づく。
さあ、誰だ。誰を見た?
クラス皆がサトシに注目する。
最初反対していた、南先生も固唾をのんで耳を傾けている。
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