疑われる

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疑われる

 俺は先にお風呂に入る。その間に彩はご飯を作ってくれるらしい。  お風呂に入る前に、買ってきた服から肌着と服の上下を取り出して、タグなどを外す。部屋の中にいるのだから靴下と靴は必要がない。  お風呂に移動して服を脱ぐ。脱いだ服は適当に散らかさずにたたんでおく。この後着る服と間違えないように注意しないとな。ちなみにバスタオルは借りた。  改めて自分の体を見る。色は白く、細くて華奢な体。以前の自分と比べて、ずいぶんと貧弱になったものだ。だが、顔を見てみるとやっぱり可愛いと思う。自分で言うのもなんだけどな。  俺は体を洗って湯船につかる。体を洗う動作も手慣れたもので、まるで最初から女だったかのような感じだ。それはそれで何とも言えない気持ち悪さを感じたが、気にしてもどうにもならないので湯船でゆっくり体を温めた。  俺はお風呂から出る。 「ありがとうございます。お先にお風呂頂きました」  彩に声をかけるのだが、どうもいまいち反応が薄い。俺は彩の方をのぞき込む。すると彩の視線の先には、俺の持ち物であるスマホが置いてあった。 「彩お姉ちゃん、どうしたんですか?」  何となく聞いてみる。だが、すぐに俺は聞いた事を後悔する事となる。 「これ、かずみちゃんの携帯だよね?」 「うん」  俺の持ち物だから当然肯定する。 「今日の事を知り合いに話しようと思って電話したんだけど、そしたらなぜかこの携帯が鳴り始めたのよ。間違いかと思って何度かかけ直してみたんだけど、切ると同時に音は止むし、かけると音は鳴るしどういう事なのかなと」 「知り合いって?」  俺は着信音の事は無視して、知り合いという言葉の方に質問する。 「ほら、昼間に話をしたかずみちゃんと同じ名前の幼馴染みの事だよ」  ……俺が思うに、比較的近所で会う事もあるだろうから連絡しようとしたところだろうか。だが、彩も俺の話は知っているはずだ。いくら出会った人間が子どもとは言っても、女癖の悪い奴のところに連絡しなくてもいいと思うのだが。  俺が彩の行動に驚き戸惑っていると、彩がさらに驚くべき事を言ってきた。 「でもなんで、(かず)君の携帯をかずみちゃんが持ってるの?」  どうやら少女姿の俺の持っている携帯は、男の俺の携帯と特定されてしまったようだ。
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