ご飯を作る

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ご飯を作る

 俺は彩のお風呂を待つ間に台所に来ていた。待っている間にご飯の準備をしようと考えたからだ。  だが、次の瞬間俺は驚いた。炊飯器はあるものの、ご飯が炊かれていない。彩は俺のお風呂の間に何をしていたんだよ。  俺は電話の話を思い出す。……あいつ、俺がお風呂に入ってすぐ電話をしてそのままになったな? しょうがない、俺がご飯の準備をしておくか。俺はお米を研いで炊飯器を仕掛けると、買ってきた物から適当におかずを準備し始める。その前に彩の調理場の設備と道具と調味料を確認する。大体は俺のところと同じなので、もともと作る予定だったおかずを作る事にする。  ご飯は早炊きモードなので30分もあれば炊けるだろう。彩のお風呂がどれくらいの長さか分からないが、10分もあればあれ程度のおかずは出来上がる。米の準備で4~5分かかっているのが、まあ問題はない。  彩がお風呂から出てきた。 「あら、いい香り」  彩の言葉に反応して、俺は彩の方を見る。室内着を着ているお風呂上がりの彩はなんとなく色っぽい。男の時ならどうなったか分からないが、少女となった今では(うらや)ましいくらいしか感情が湧いてこなかった。 「(かず)君がご飯作ってくれてるの?」 「世話になるんだし、これくらいしてもいいだろ?」  彩が話しかけてくるので、俺はしれっと答える。 「悪いと思ったけど、エプロン借りたからな」  味噌汁と簡単な炒め物を作りつつ、彩に言う。彩は「別にいいよ」と言って味噌汁の味見をする。 「味覚が変わったみたいだから、味付けはちょっと自信ないぞ」 「大丈夫、おいしいよ」  彩の表情を見るに、味は問題なさそうだ。 「しゃべり方が(かず)君なのに、姿は可愛い女の子、声も高くて可愛いからなんだか不思議な感じになるわね」 「そう言われると恥ずかしいな。でも、なんでかな、可愛いって言われるのは嬉しく思うよ」  俺は照れながらおかずを盛り付ける。 「(かず)君も完全に女の子だね。今日なったばかりなのに早いよ」  彩はそう言いながら微笑ましく笑っている。でも、俺もそう思うので、彩を怒る事はしなかった。  ご飯が炊けるまでまだ時間があるので、仕方なくおかずだけで晩御飯にする事にした。
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