一日の終わり

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一日の終わり

 話もまとまった事だし、あとは寝るだけとなった。ところが、彩が俺に尋ねてくる。 「ねえ、もしかしてその格好で寝るの?」  俺は自分の姿を見る。うん、スカートだな。 「そのまま寝たら、スカートがしわになるから駄目よ。これに着替えて」  彩はそう言うとタンスからパジャマを持ってくる。サイズが合わないと大変だからとワンピースタイプを持ってきた。お前、着てるのか。 「少し大きいみたいだけど、似合ってるよ」  俺は鏡を見る。確かに似合っている気はするが、袖が少し余っている。パジャマだから許容範囲かな。邪魔なら(まく)ればいいだけだ。  パジャマに着替えたので寝る事にするのだが、大変な事実が発覚する。布団が一組しかない。俺は抵抗したのだが、やむなく同じ布団で寝る事にする。今は女同士だ、何も問題はないはずだ。俺たちは布団の中で寄り添うように横になる 「おやすみ、彩」 「おやすみ、(かず)君」  いろいろ話したい事はあるが、精神的に疲れた俺はすぐに寝息を立てて眠ってしまった。彩の表情は穏やかに笑っていたと思う。  思えばとんでもない一日だった。朝目が覚めると少女になっているし、やむなく外へ出れば振った幼馴染み出くわし、その幼馴染みと一緒に暮らす事になった。その幼馴染みは特に俺を恨んでいる様子はない。  形はどうであれ、彩と一緒に暮らす事となった。俺は今度こそ彩と離れるつもりはない。離れてたまるものか。  男に戻るつもりは今はない。男に戻ったところでまた女癖の悪さが出ては困る。せっかく彩と暮らせるというのに、ぶち壊されては困るからな。  彩の態度でも分かったが、彩はまだ俺の事が好きなようだ。携帯に俺の連絡先が残っているのがいい証拠だ。嫌いになったら即刻消しているはずだからな。  もう一つ分かった事がある。俺の方もまだ彩の事が好きという事だ。少女姿になって思考にかかったもやが取れたからだろうか、自分の気持ちというのがはっきりと分かる。となると、あの女癖の悪さは不可解極まりない。彩が好きでありながら他の女と遊びまくってたわけだからな、あのままならいずれ恨みを買って殺されていたかも知れない。ありえない形ではあるものの、俺は助かったと言える。  俺はこれからの生活に不安と楽しみを抱えつつ、翌日の朝を迎えたのだった。
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