目が覚めて

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目が覚めて

「んん……」  俺は目を覚ます。外はまだ暗く、時計を確認すれば午前五時。いつもなら起きて出勤する時間だ。しかし、会社を辞める事にして今日からは退社前の有休消化期間。慌てる必要はない。  隣を見ると、彩がまだ寝ている。寝かせておいてもいいのだろうが、彩も会社員だから起こした方がいいのだろうか。とりあえず朝ご飯を準備してから起こす事にして、俺は布団から立ち上がる。  空気は冷たい。暖房を入れているとはいえど、まだ朝は冷え込む。  俺は自分の体を見る。彩から借りたワンピースのパジャマを着ているし、胸は小さいながらも2つの山がある。女の体のままという事だ。夢であってほしかったが、現実なのでおとなしく受け入れる。  俺は顔を洗うと服を着替え、朝ご飯の準備にかかる。ご飯はお昼の分を含めて多く炊く事にした。炊飯器の準備が終わると、彩を起こす。この時点で5時半だ。 「(かず)君、おはよう」  彩が目を覚まして、顔を洗いに行く。戻ってきた彩に「早かった?」と聞くと、「ちょうどいいよ」と返事が返ってきた。どうやら彩も同じような生活リズムのようだ。  朝ご飯は玉子焼きに味噌汁に漬物と簡単な物だ。とはいっても、味噌汁は結構具沢山にしてある。彩は驚いたように俺を見るが、俺はいつも作ってるよと言わんばかりに首を傾げてみせる。少女ならこの仕草は可愛いものだが、男だったら吐きたくなる。彩はくすくすと笑うとおいしそうにご飯を食べていた。 「それじゃ、会社行ってくるわね」 「いってらっしゃい」  俺は彩を見送ると食器の片づけや昨日着た服の洗濯をする。確か、下着はネットに入れて洗うんだったな。俺は服を見てみる。男物とは確かに生地や作りが違う。生地が同じでも装飾が多かったりするので洗い方には注意が必要なようだ。正直面倒だが、これから長い付き合いになるかもしれないので、丁寧に扱う。もちろん干し方だって気をつける。下着などは直接日の当たりにくい窓側に干した。  食器洗いと洗濯を終えた俺は、ひと息入れる。昨日買った自分用の紅茶を出してテレビを見ている。ろくな番組がない。テレビを消すと、布団を干して掃除機をかける。それも終わればいよいよ手持無沙汰だ。暇になったので掃除をした床にごろりと仰向けになる。何をしようか……。
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