お金の問題

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お金の問題

 ほどよくお昼の時間になったので、俺はお昼を作って食べる。食べながら今後の事を考える。  まずは住んでいた部屋の事。できる事なら早めに引き払いたい。  しかし、これには問題がある。住んでいた俺がこんな姿になった事で面倒くさい事になった。俺自身で解約できない。となると保証人になっている親にしてもらう方法があるが、俺の事の説明が面倒。彩に委任するしかないかな。まあ、彩に相談して、細かい事は管理会社に聞けばいいから保留だな。  次の問題は携帯電話だ。名義は俺で契約してある。だが、問題はそこじゃない。お金だ。数か月分は大丈夫なようにしてあるが、いずれは底をつく。彩に支払いを頼む事もできるが、何から何までお世話になるわけにはいかない。一度は成人した身だ、自分で何とかしたい。  俺は改めて鏡を見る。可愛い襟のついた長袖シャツに少し長めのスカート、それに寒いからとサイハイソックスを履いている。肩にかかる軽いウェーブのかかった髪の少女は、どこからどう見ても未成年だし、高校生には見てもらえないだろう。そうなるとアルバイトは厳しいな。身分証もないし、履歴書も嘘まみれになる。却下だな。  いろいろ考える。ネット上だけで完結できれば姿を見せる事もないだろう。だが、俺には大した趣味もないし技術もない。元の状態で作った口座があるから投資系でもやってみてもいいが、ど素人の俺にそんなリスクの高い真似はできそうにもない。  結局、どうするか結論が出ないまま夕方を迎えてしまった。仕方ない、この辺は全部彩と相談して決めよう。俺は布団と洗濯物を取り込んでたたむ。一人暮らしの時は仕事もあるので結構適当にたたんでいたのだが、今は自由なので丁寧にきれいにたたんでいく。  彩から大体の帰宅時間を聞いていた俺は、お風呂と夕飯の準備に取り掛かる。最初にお米を研いで炊飯器を仕掛ける。炊いている時間を使ってお風呂の掃除。湯船と床や壁をきれいにして、お湯張りをする。彩は一人暮らしなのに1LKの部屋を借りている。お風呂も自動でお湯張りができる装置があって、いったい家賃はいくらなんだと聞きたくなる。  キッチンに戻っておかずを作り始める。彩の好物を思い出しながら、昨日買った物や冷蔵庫の中身を見て作る物を決める。作る物が決まれば後は早い。  おおよそ作り終えたところで、玄関の呼び鈴が鳴った。
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