品定め

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品定め

 俺はシンプルなのでいいと言っているのに、彩はひらひらの多い服を持ってきては俺の体に当てる。ブラウスにワンピース、それからスカートにズボン、果てはレギンス。服の着脱をしてないけど着せ替え人形の気分だ。可愛いのはいいからアクティブなのも見せてくれ。  あれやこれやと服を選んでいる彩から離れて、俺は靴を見に行く。背が縮んだ事もあって、やはりかかとの高い靴の方がいい。サンダルの置いてあるコーナーを見る。 「サンダルといっても、結構種類があるな」  俺はじっくり品定めをする。地味なのでもいいと思っていたのだが、姿に引っ張られているのかリボンのついたかかとの高いサンダルを手に取る。サイズは22.5でストラップで足首に固定する脱げにくいタイプだ。  近くにある椅子に座って試しに履いてみる。うん、いい感じだ。これにしよう。無事に靴を選んだところで彩のところに戻る。彩は俺が居なくなった事に気付かず、服を選び続けていた。集中しすぎだろう……。 「彩お姉ちゃん、まだ選んでるの?」  俺が声をかけると、彩が驚いたように俺の方を見る。だから集中し過ぎだって。 「なにをそんなに驚いてるの?」  俺はきょとんと首を傾げてみせる。すると、彩は焦ったかのように言い訳を始める。別にいいんだけど、子どもから目を離しちゃいけないだろ。俺は大きくため息をつく。彩は謝ってくるが、俺は選んできた靴を見せながら「別にいいよ」と慰めた。 「靴は一つだけ?」  俺の持つ靴を見た彩が聞いてくる。スニーカーとブーツが一足ずつあるので、さすがにこれ以上は要らないと思うんだが……。それにお金の問題もあるから必要最低限でとどめておきたい。彩にその事を言うと、「それもそうね」と納得してくれた。  俺は彩の選んだ服を体に合わせてみる。悪くはないかなと思うが、俺に女の服の事はあまり分からない。そんな中でも気に入った物はとりあえず試着してみる。振り返ったりくるりと回ってみたり、服の感じを確かめてみる。うん、いい感じなので購入を決める。  服を決めると下着やパジャマも見て回る。下着が意外に数が多い上に価格も高い。値札を見た俺は驚いて口をパクパクさせてしまう。そんな俺を見ながら、彩はにっこりと微笑んでいた。いいのか?  装飾は少なめだがおしゃれな下着を靴下も含めて3セットずつ12点と、パジャマがワンピースタイプが1着にセパレートタイプを1着購入する。会計はまだだぞ。
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