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目覚め
ピピピピピピ……。
目覚まし時計が鳴る音が響く。部屋の中はカーテンの隙間から差し込む光で少し明るくなっている。
「う……ん……」
俺は目をこすってから軽く伸びをする。
その時にふと違和感を感じた。寝ぼけているのかなと思ったが、その違和感はすぐに分かった。
まず、やけに視線が低い。いつも目の前にあるはずの物が、正面の少し上に移動している。そして、自分の手もなんだか小さい。ごつごつした感じではなくなんとなくつるっとした感じだ。
言い知れない不安。俺は鏡を見ようと立ち上がる。するとどうだろう。パジャマのズボンと下着が引っかかる事なくずり落ちる。
「?!」
俺は部屋の姿見の前に急ぐ。そして、鏡に映し出された姿を見て驚く。
「これは……誰なんだ?」と心の中で呟くが、今いるのは自分の部屋だ。しかも一人暮らしで俺以外は誰もいない。そこから導かれる結論はひとつしかなかった。
「これが、俺なのか?」
どうも嘘でも冗談もないようだ。パジャマは幅が余っているので、ずり落ちて肩が見えている上に袖も腕から余って垂れている。下のパジャマはずり落ちたまま放置されている。
だぼだぼになったパジャマを上からのぞき込む。胸部は膨らみ、しっかりと谷間ができている。地味に大きい。そして、下半身の異常にも気付く。何もない。これらから導き出される結論はひとつだ。
「……女?」
そう、いわゆる『あさおん』だ。しかも少女化のおまけつき。姿見をどう見てみても、元の自分から2~30cmは低くなっているし、自分の知る限りの女性と見比べても明らかに中学生か高校生くらいの容姿だった。
『罰を与える』
俺の頭にその言葉が思い出される。少女化が『罰』という事か?
俺は混乱してはいるものの、慌てていても仕方ないといつもどおりに顔を洗って着替える。とはいっても男の一人暮らしだ、少女の服などあるわけがない。適当な服を見繕って着る。余る丈は折ってまくり上げる。
「今日が休みで助かったよ」
ぼそっと独り言を言う。元の姿に戻れるかどうかわからない。俺はしばらく、鏡に映った自分の少女姿を眺めていた。
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