25人が本棚に入れています
本棚に追加
外食をする
部屋に戻ってきた俺たちは、服の入った荷物をとりあえず部屋の隅に置く。
時間はそろそろお昼時になる。俺は昼食の準備をしようとするが、彩に止められる。
「今日のお昼は外で食べようか」
「いいのか?」
「いいのよ。この程度で金欠にはならないし、和君も私の性格知ってるでしょ?」
「ならいいけど」
俺は外食を了承する。
彩の性格は昔からこんなのだ。真面目だし、お節介だし、言い出すと聞かないし、全然変わっていない。あと、俺に振られたし、俺の女遊びの事も知っているはずなのに、いまだに俺の事は信用しているようだ。俺が女になった事もあっさり信用して受け入れるくらいだからな。俺が詐欺師になってたらどうなるんだよ。信用してくれるのはありがたいんだけどさ。
荷物を置いて出ようとすると、俺は彩に止められる。
「和君、髪飾り着けようよ」
彩はまぶしいくらいの笑顔で言ってくる。俺はこのままでもいいだろと反論するが、聞き入れてくれない。結局押し切られる形で、しぶしぶ了承する。
俺は荷物から白いリボンを取り出す。それを彩に手渡すと、俺は髪の毛を後頭部の高い位置でまとめる。そして、それを彩がリボンで結ぶ。ポニーテールだ。
「うん、似合ってるし可愛い」
「恥ずかしいぞ」
俺は照れくさそうに頬を掻く。しかし、これ以上、部屋でグダグダしてるわけにもいかないので、俺たちは出かける。この後はお昼を外で済ませてから再び買い物をする予定だ。食材は夕方のタイムセールに合わせて買う予定で、広告はチェック済みだ。
「かずみちゃん、何か食べたいものはある?」
彩が俺に聞いてくる。すでに外にいるので「かずみちゃん」呼びだ。だから俺も「彩お姉ちゃん」と呼ぶ。俺は正直不満なのだが、彩の表情は満面の笑みだ。彩は一人っ子で、昔から妹や弟が欲しいとか言っていたから、少女化した俺とはいえ年下の家族ができて嬉しいのだろう。……複雑だな。
俺たちがやって来たのはファミレスだ。ご近所にはあるものの、お互い一人暮らしだったし使う事もなかった。今日は彩と一緒なので、たまの贅沢はいいかも知れない。
ファミレスは混雑する時間は過ぎていたようですんなりと席に座る事ができた。俺たちは、料理とドリンクバーで注文する。注文が終わるとドリンクバーへ行って飲み物を取ってくる。俺はいつもの感覚でコーヒーを入れる。飲んでみるがかなり苦い。明らかに味覚が変わっているようだった。
最初のコメントを投稿しよう!