女の子は大変

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女の子は大変

 コーヒーを苦々しく飲んでいるが、我慢できずに砂糖とミルクを入れる。うん、おいしい。そんな俺を見て、彩はくすくすと笑っている。ホントによく笑ってる。(怒)  俺が怒って彩に問い詰めていると、注文した料理が運ばれてきた。よく思えば、ファミレスで食事をするなんて何年ぶりだろうか。俺はしみじみとしながらドリアを食べる。 「あっつ」 「ほら、慌てて食べるから」  俺がコーヒーと一緒に持ってきていた水を慌てて飲むと、俺と彩は笑いあう。傍から見てると、きっと仲のいい姉妹に見えるんだろうな。だが、感性はだいぶ体に引っ張られているとはいえど、俺は男だ。見た目が女である以上、姉妹に見られるのは構わないが、俺自身が納得しない。俺は男だ。  ファミレスで食事を終えた俺たちは、外へ出て次の目的地に向かう。ちなみにファミレスの会計は彩が支払った。ま、当然だよな。 「かずみちゃんは、今日で三日目でいいんだよね?」 「うん、会った日が初日だからね」  日曜日の朝に女になって、今日は火曜日だから三日目で間違いはない。それなのに、いろんなものへの感覚がすでに女への変化に対応している。正直言って早すぎると思う。女の裸を見てもなんとも思わなかったり、女の仕草を無意識にしていたり、思い当たる節が多すぎる。このままじゃ自分が男だった事を忘れそうで危険だ。 「それじゃまだしばらく大丈夫そうね」  考え事をしている俺に、彩はそんな言葉をかける。それに対して俺は首を傾げる。何を言っているのか分からない。 「あ、分からないかな。女の子にはひと月に一度やってくるモノがあるのよ」  彩の言葉に俺はポンと手を叩く。 「生理か」 「うん、女の子になったばかりなら終わった後と仮定できるから、早くても三週間は大丈夫だと思うよ」  彩と付き合っていた頃を思い出す。生理が来ると体がだるくなるとか言っていたっけか。症状は人それぞれだけだとも言っていた気がする。重くならない事を願いたいが、俺に反省を促すなら症状が重くなるかも知れない。今から気が重いな。 「いや、備えあれば憂いなしだよ。彩お姉ちゃんの事もあるし、先に買っておいて使い方とか聞いておきたいし」  心配な点は先んじて潰す。ある程度予測できるから当然の事だ。何も対策をしないで慌てるよりよっぽどいい。  俺たちは生理用品を買いに薬局へと向かった。
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