買い物

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 俺は彩から逃げるように店に入る。  ここでの目的は、服と靴を買う事。服や下着は三着ずつ、靴は予備を含めて2足買う事にしている。とりあえず俺は、店内を見て回る。折角なのだから、容姿に合わせた可愛い服を見繕う。  今の季節は冬。すぐに暖かくなる時期とはいっても、最低でもまだひと月は寒い。春物を中心に羽織る物や下に重ねて穿()く物、自分のファッションセンスを頼りに選んでいく。 「よし、こんなものかな」  気が付けば30点ほど、金額にして5万円くらいになっていた。いくら量販店の安い衣類とはいっても、数が数だから仕方ないな。レジに持って行って現金一括で払うと、レジの人に驚かれたのは言うまでもない。だって、どう見ても子どもなのに、買う服の数もそうだし、大金を持っている事も普通に考えればおかしいわけだしな。  無事に服を購入した俺は、店を出る前に店員に声をかける。行きがけに何度も危ない目に遭ってるし、いつまでもこんなぶかぶかの服を着ているわけにもいかない。1セットだけタグを外してもらい着替える。 「うん、結構似合うな」  服は装飾のないシャツにデニムのジャケット、チェック柄のスカートに黒のサイハイソックス、靴はショートブーツを履いている。ブラジャーは着けているが、着け方を事前に調べていたので特に問題なく着ける事が出来た。これでどこから見ても普通の少女だ。  しかし、このスカートというものは何となく落ち着かない。少し丈が短かっただろうか、裾から冷たい空気が入ってきてスースーする。これはもう慣れるしかないな。  特に問題もなく着替え終わった俺は、着て来た服を空いた袋に詰め込む。荷物がかさばるので一旦部屋に戻る事にする。元の男の状態でもそうだが、さすがに少女姿でこの荷物の量は持ちきれないし重すぎる。  着替えるために試着室を借りていたので、俺は店員にお礼を言ってから店を出た。しかし、店員は女性だったのだが、女性に素直にお礼を言うとか俺は少し自分が信じられなかった。やはり感覚が変わった? つい昨日まで、女は遊び道具程度に考えていたのだから、これには正直驚いた。  店を出た俺はマンションへ戻る。初めて着る女物の服に戸惑いながらも、来た道を戻る。かかとの高いブーツだったが、ぶかぶかのサンダルに比べれば歩きやすいので、帰りは15分程度で戻れた。  荷物を部屋に置くと、俺は再び買い物へと出かけた。
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