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彩の部屋に行く
俺は彩と買い物をしながら考える。長く悩んだ末、彩の提案にはメリットしかないと結論付けた。理由としては、
一、彩と住む事で住居の心配がなくなる。
二、女の悩みを彩に相談できる。
三、なにより彩の事は幼馴染みで知っている。
といったところだ。ただ、彩の腹の内は分からない。心配要素はそれくらいだし、断る理由としては弱いかも知れない。レジで会計が終わった後、商品を詰めながら俺は、
「彩お姉ちゃん」
と、彩に声をかける。
「ん?」
「私決めたよ。彩お姉ちゃんと一緒に暮らす。その方が不安じゃないから」
振り向いた彩に、俺はそう伝える。彩は驚いた表情を見せるが、すぐにくすっと笑ってみせる。
そうと決まれば話は早い。早速俺は彩と一緒に彩の住むマンションへと向かう。大体の場所は知っているのだが、行くのは初めてだ。
マンションに到着すると、彩の案内で彩の部屋まで向かう。入口はオートロックになっていて、彩は鍵のタグをかざして入口を開けた。キーホルダーがICタグになっているのか。
彩に続いてマンションへと入っていく。彩の部屋は5階の中央ほどにあった。彩の案内で中に入って部屋を確認する。部屋の中はさすが真面目な性格ゆえの整理整頓されたきれいな部屋だ。中を見回すと、居間のテーブルの上にある物が目に入る。写真立て? 写真に写る人物に驚いて彩の手を引っ張る。
「彩お姉ちゃん、あの写真の人は誰?」
俺が写真を指差す。指の差す先を確認した彩は一瞬動揺したような素振りを見せた。そして、「片付け損ねただけだから」と言って写真立てを引き出しにしまったのだ。
あの写真の人物は、間違いなく元の俺だ。それが飾ってあったという事は……。俺はそれ以上、彩の追求はしなかった。
食材を冷蔵庫などに片付けて、俺はふと思い出した。さっき買った服だ。自分の部屋に置きっぱなしになっている。あれがないと着替えができない。彩に一旦部屋に戻っていいか尋ねる。服以外にもいくつか持ってきたい。彩が付き添うとか言ってくるが、さすがに見られたくないのでやんわりと断った。
最低限、パソコンや生活用品を持ってくるとしよう。俺は彩の部屋を出て、急いで自分の部屋へと走っていった。
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