9 ※R18

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 光太郎の両手が意思をもって動き始める。裸の胸元をまさぐり、撫で上げて、時折わざとその尖りに触れる。 「ぁ、ん……」  泉が甘い声をあげれば、それに応えるかのように右手で左胸の突起をつまむ。指の腹で転がし、押し潰し、左手は腹をつたって下腹部へと下っていく。甘くじれったい刺激に息を乱しながら、泉は光太郎の背にしかとしがみつく。それでいて手を震わせながらも光太郎のシャツをたくし上げていくのだから、される方は余計に劣情を煽られる。 「若、若桜さま……もう、我慢できない」  光太郎は上衣を脱ぎ去ると、強く泉の体に己の体躯を重ね合わせる。そして右の胸に吸い付くと、舌で激しくそこをねぶった。 「ひゃ、ぁう……んっ、んん……」  突然の激しい刺激に、泉のしなやかな背が弓なりに反る。そこに手を差し込み、抱え込むようにして光太郎はその体を味わった。そして反対の手でついにその昂りに触れる。もはや下着一枚しか身に着けてはいない泉のそこが濡れそぼっていることは、隠しようがなかった。  布一枚隔てた上から、光太郎の大きな手がそこを摩る。優しく、だけれど確実に情欲を煽り立てるように擦っては、舌で胸の飾りを転がす。泉は身を捩って快感に耐えるが、耐えれば耐えるほどひとつひとつの刺激に敏感になった。 「声を殺さないで。もっと聞かせてほしい。俺を感じている、あなたの声を」 「こう、が……っ」  光太郎が体を起こし、再び唇が重なる。息を乱しながら舌と舌で互いを感じていれば、熱い手はすっかり本来の役目を果たさなくなった泉の下着をかいくぐり、ごそごそと中へ分け入ってくる。どうしようもなく濡れたそこを直に握りこまれれば、一気に高みへ押し上げられる。まだ達したくはない、もっと紅牙を感じていたい。その首へしがみつく力を強くすれば、答えるように唇を強く吸われた。 「……ちょっと失礼するね」 「あ……っ」  丁重に断りを入れてから、泉の先走りで濡れた指先が体内へ潜り込んでくる。恐る恐る、反応を窺うように侵入してくるその動きは、かえって深い快感の波を泉にもたらした。 「熱い、若桜さまの中、これほどに……」 「ふ、ぅう……っ」  根本までを収めると、ゆるく引き抜いて出し入れをしたり、中でぐるりと回転させたりしてはそこを広げる。その動きに泉は逐一体が跳ねてしまう。指一本とはいえ、体の中に光太郎の一部がある。その事実だけで胸がいっぱいで、何も考えられなかった。 「紅、牙……おまえのものも、触れさせてくれ」  両腕を伸ばして、未だ寛げられていない光太郎のそこに触れる。ズボンの上からでも固く張りつめているのが分かってしまい、自分の痴態がこうさせたのだと思って頬が赤くなる。だが今更照れてなどいられない。たじろぐ光太郎に構わず、力の入らない手でなんとか服をずり降ろした。 「熱い……」 「ん、く……若桜さま、っ」  両手で包み込んで、やわやわと揉みしだく。上下に擦り上げればビクビクと血管が収縮するのが愛おしい。自分の手のひらで育ちゆくそれに、どうしようもない慈しみの念を抱いた。 「紅牙、ほしい、おまえが全て」  自分と同じ限界まで早くたどり着いてほしくて、その先端に爪をたてる。 「いッ……」  予期せぬ痛みに奥歯を噛んでしかめられる顔も美しい。泉は意地悪く笑うと、その窪みを何度も執拗に刺激した。自身は内部を擦られてどうしようもなく熱が上がっているというのに、体が止まらない。もっと、もっと、と。色んな光太郎が見たくていくらでも欲が湧いてくる。  いやらしく笑う泉に苦笑すると、光太郎はやや乱暴に指を引き抜く。濡れた音がして、白い太腿がヒクヒクと震えた。 「若桜さま……」  両手を泉の顔の横につき、昂った自身をそこに宛がって。幻に浮かされたような瞳で泉を見下ろす。  ずっとこうしたかった。こうなりたかった。この瞬間を夢見て何度自身を昂らせたか分からない。そしてそれはきっと、光太郎もも同じなのだろう。はあはあと息を荒くさせて、頬は紅潮し、今にも張り裂けそうなほどにそこを切なくさせて。なのにこの瞬間をいつまでも味わっていたいとでも言うかのように、動こうとはしない。  まだ繋がってもいないのに涙が溢れた。目の前の姿が歪む。光太郎。紅牙。愛おしかった。自分を奪ってほしかった。共にありたかった。ようやく、悲願が果たされる。  やがて決心したように光太郎の口が引き結ばれる。ぐ、と腰を進めれば、先端が入り口を押し広げた。 「ッう……」  無理に広げられる痛みに泉は下唇を噛む。それを見て痛ましげに顔をしかめながらも、光太郎の動きは止まらない。ぬ、ぬ、と音を立てて割り入ってくる。 「は、ぁ……ッ、あ、く……っ」  一番太いところが収まってしまえば、あとは勢いだった。 「――ッああっ!」  凶悪なまでの存在感をもって光太郎のそれが全て泉の体内に収まる。  臓腑の奥で脈打つこれが、紅牙のものなのだと。そう思ってしまったらもう理性は吹き飛んだ。泉は顔をくしゃくしゃにして、声をあげて泣きじゃくった。やっと、繋がることができた。やっと、受け入れることができた。この体を。この想いを。命を蝕む呪いに姿を変えるほどに強く深い、紅牙の想いを。全てこの体内に今収めている。  光太郎も静かに涙を落としていた。ふたりの間に言葉は要らなかった。ただただ悲しく、切なく、そして幸福だった。
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