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 柔らかな布をかき分けると、あらわになる白い肌。汗ばんだ手でそっと触れる。柔らかくて、温かくて、なめらかで、ぴたりと手のひらに吸い付くようなその感触は、この日のために日頃から絶え間ない努力を重ねて作り上げてきたものなのだろう。そう思うと余計にいじらしさが増す。乾いた唇を少し舐め、その豊かなふくらみを覆うレースに手を伸ばし――。 (なにか、ちがう)  スッと熱が引いていく。違う――そう、直感する。 「ごめん」  萎えてしまったと告げた瞬間、目にもとまらぬ速さで平手打ちが炸裂していた。 「まーた若ふられたのー?」 「大きな声で言うな!」  ぎゃははは、と遠慮のない笑いが教室の一角に響きわたる。まだ休み時間とはいえ、ほかの学科の学生も含めて結構な人数が着席している。泉は真っ赤になって友人たちを諫めるが、自身のその声が誰よりも大きいため余計に注目を集めているということには気づいていない。 「二年になって何人目?」 「やべえよなあ、そんなにモテるのに童貞とか。もはや伝説だわ」 「どっ……ちがう!」  周囲で名前も知らない女の子たちがクスクス笑う。それは童貞うんぬんよりも、端正な顔を真っ赤にして慌てふためく泉の様子が微笑ましいからなのだが、本人には知る由もない。 「いやー逆に若にはずっとこのままでいてほしいよな」 「わかるわかる。卒業するまでは貞操を守ってほしいわ」 「だから童貞じゃ、ふがっ」  思わず立ち上がりかけた泉の口が、背後から大きな手に塞がれる。いつの間にかそこに立っていたのは、泉の幼馴染である光太郎だった。 「ちょっとお。うちのダーリンをあまりいじめないでくださる?」  妙にこなれたその言い様にまた笑いが起きる。泉はに振り返って何か言いたそう光太郎をにらみつけるが、口がふさがれたままなので息を荒くするだけである。
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