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好きに理由などつけられない。
しかし、どうしてこんなに想ってくれるのだろう。そして、どうしてこんなに惹かれるのだろう。
そんなことをふと思う。
こんな風に常に「理由」や「原因」を突き詰めてしまうところは、昔からの癖だ。それは研究には役に立つ。しかし、感覚的なことが優先される恋愛などには向かない。いくら考えても、答えなど出ないのだから。
「何か考えてる?」
理真の唇のすぐ側で岳の唇が動く。触れるか触れないかの距離感と岳の吐息に、理真の身体がピクリと反応する。
肌がゾクリと粟立つような、そしてくすぐったいような、何とも言えない感覚にぎゅっと瞳を閉じた。
岳の指が理真の頬に触れ、撫でるような仕草に身を竦める。恐る恐る目を開けると、岳の瞳に映る自分がぼんやりと見えた。
今までに見たことがない自分の姿に愕然とする。瞳は潤み、今にも泣き出しそうな顔。しかしそれは、浅ましいほどに岳を強く求める表情だった。
こんな顔は知らない。こんな自分など知らない。大きくもたげる知らない自分に怖くなる。
再び瞳を閉じると、唇に熱がこもった。
「そういう顔、反則」
「……っ」
また、雨のように情熱的なキスが降り注ぐ。唇を重ねながら、岳の指は追い詰められたように忙しなく、理真の素肌を求めて蠢く。その動きに、今にも零れそうになる声を必死に抑えようと、理真の手が口元に伸びた。
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