伝えること、受け入れること

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 ***  次の週末、理真は仕事を終えて研究所を出ると、そのまま駐車場へ向かった。そこにはすでに一台の高級車が止まっており、車に寄りかかるようにして岳が立っていた。  まさか外で待っているとは思わず、理真は慌てて岳に駆け寄る。 「すみません、お待たせしました」  理真の顔を見るやいなや、岳は安堵の表情を見せ、これ以上ないほど嬉しそうに笑った。 「ううん、そんなに待ってないよ。……ちゃんと来てくれてよかった」  そう言って目を細める岳に、きゅっと胸が締め付けられる。  理真から連絡したのだから、すっぽかすわけはない。  それでも、岳は心配だったのだ。理真が本当にここへ来るのか。そもそも、理真が電話をしてきたことは現実のことだったのかと。  というのも、理真が真崎と会った後で電話をした時、岳はワンコールで電話に出て、開口一番こう言ったのだ。 『理真ちゃん? 本当? 悪戯とかじゃないよね!?』  ワンコールで電話に出るとも思わなかった上、第一声がこれだ。理真は呆気に取られ、緊張も何もかも吹っ飛び、思わず笑ってしまった。  その後も、岳は何度も何度も尋ねてきた。本当に理真なのか、これは現実のことなのか、と。その度に理真はあの日のことを謝り、会って話がしたいと言った。そして、これは夢などではなく、現実のことだと、何度も何度も念を押した。  そして、会う日を今日に設定したのだ。岳は自分の部屋で話を聞くと言って、迎えに来ることを理真に了承させた。こちらが話したいと言っているのに、迎えに来させるなどとんでもないと言ったのだが、岳は聞かない。 『ギリギリで怖気づかれたら困るから、逃げられないように迎えに行く』  もう覚悟を決めたのだから、逃げるつもりなどないのに。  しかし、一度逃げたのだから信用がなくて当たり前だ。理真は仕方なく、それに応じることにしたのだった。  岳に促されるまま車に乗り、岳のマンションへ向かう。  岳は到着するまでに、何度も理真の方を見て何かを言いかけた。しかし言葉を発することはなく、すぐに運転に集中する。そのことが気になりつつも、理真も声をかけることができない。焦れた空気を孕んだまま、車はスムーズに進み、二十分ほどで目的地に到着した。
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