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久しぶりに訪れる岳の部屋。岳に続いて中に入ると、いい匂いが漂ってくる。
「……あの」
「お腹すいてるでしょ? まずは食事にしよう」
まっすぐダイニングへと連れて来られると、テーブルの上には所狭しとご馳走が並んでいた。
「これ、いつ用意されたんですか?」
「昨夜仕込んで、理真ちゃんを迎えに行く前に仕上げをしたんだ。ちょっと温めなおすね。理真ちゃんは座ってて」
岳は理真を椅子に座らせると、作業に取りかかる。楽しそうにキッチンをあちらこちらに動いている岳を見て、理真も立ち上がって岳の側に行く。
「理真ちゃん?」
「あの……お手伝いさせてください」
岳一人が動いていることが申し訳ないという気持ちもあったが、何より、楽しそうにしている岳の側にいたいと思ってしまった。離れていた反動なのかもしれない。少しでも長く側にいたいと思う自分の気持ちに、理真自身が驚いていた。
「じゃ、一緒にやろうか」
「はい」
岳に教わりながら、数々の料理を温めたり、調理しなおしたりする。こうやって誰かに教えてもらいながらだと、料理も楽しい。誰かと一緒なら、面倒だと思わないことが不思議だった。
準備が整った頃には、すっかり打ち解けた空気になっていた。まるで時間が巻き戻ったかのように、理真と岳は他愛のないことを話しながら、食事を楽しむ。
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