伝えること、受け入れること

19/28
前へ
/202ページ
次へ
「はい、コーヒー」  食後のコーヒーは、リビングに運ばれる。理真が三人掛けのソファに座ると、岳も理真のすぐ隣に腰掛けてきた。 「あの、隣じゃ話しづらいんですけど……」  話をするのだから、向かい合った方がいい。しかし岳は、首を横に振った。 「側にいる方が、本当の気持ちが伝わるから」 「え……?」  岳は少し困ったような顔で笑う。 「こうして側にいれば、緊張とか、緩み、そして悲しい、嬉しい、そういうのが伝わってくる。口で言ったことと気持ちが逆ってこと、あるでしょ? 特に理真ちゃんはそうだ」  理真は目を見開き、そして笑った。 「そうですね。そうかもしれません」 「理真ちゃんは何でも頭で考えすぎるから。頭がいいのも考えものだね」 「別にそういうわけじゃないですけど。でも、考えすぎるのは昔からです」 「それが理真ちゃんだから、それで構わないよ。でも、今日はなりふり構わず本音をぶちまけてくれるんでしょ?」  そう言って子供のように笑う岳に、理真が肩を竦める。  そうだ、もう格好などつけている場合ではない。欲しいものは、手を伸ばさないと手に入らないのだ。
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3429人が本棚に入れています
本棚に追加