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「はい、コーヒー」
食後のコーヒーは、リビングに運ばれる。理真が三人掛けのソファに座ると、岳も理真のすぐ隣に腰掛けてきた。
「あの、隣じゃ話しづらいんですけど……」
話をするのだから、向かい合った方がいい。しかし岳は、首を横に振った。
「側にいる方が、本当の気持ちが伝わるから」
「え……?」
岳は少し困ったような顔で笑う。
「こうして側にいれば、緊張とか、緩み、そして悲しい、嬉しい、そういうのが伝わってくる。口で言ったことと気持ちが逆ってこと、あるでしょ? 特に理真ちゃんはそうだ」
理真は目を見開き、そして笑った。
「そうですね。そうかもしれません」
「理真ちゃんは何でも頭で考えすぎるから。頭がいいのも考えものだね」
「別にそういうわけじゃないですけど。でも、考えすぎるのは昔からです」
「それが理真ちゃんだから、それで構わないよ。でも、今日はなりふり構わず本音をぶちまけてくれるんでしょ?」
そう言って子供のように笑う岳に、理真が肩を竦める。
そうだ、もう格好などつけている場合ではない。欲しいものは、手を伸ばさないと手に入らないのだ。
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