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「……桐島さんが、好きです」
「ほんと?」
「こんな時に嘘言ってどうするんですか!」
恥ずかしさもあり、つい声を荒らげて顔を上げると、岳がふにゃりとした顔で笑っていた。その締まりのない顔に、つい笑みが零れる。
「だって、夢かと思うよ」
「だから……夢じゃないって……」
「よかった……やっと、捕まえた」
息ができないほど、強く抱きしめられる。
ほんの僅かな隙間もなくピタリと触れる岳の身体から、激しい鼓動が伝わってきた。ここまで相手の鼓動が伝わるということは、理真の鼓動も岳に伝わっているということだ。岳に負けず、理真の鼓動もこれ以上ないスピードで脈打っている。
「理真」
名前だけで呼ばれ、心臓が大きくドクンと高鳴った。
これまでとは違う呼び方をされただけで、こんな風になってしまうなど知らない。今までこんな風になることなどなかった。
岳の指が理真の顎にかかり、上を向かされる。その整った顔立ちに見惚れる間もなく、唇が落ちてきた。啄ばむように何度も重なり、輪郭を確かめるような動きに身体がビクリ、ビクリと小さく跳ねる。
キスの雨は、水滴が地面に染み込んでいくように、どんどん深くなっていく。理真の口腔内にまで浸透し、今にも溢れそうになる。
一気に力が抜けそうになり、理真は必死に岳にしがみついた。岳はそんな理真にはお構いなしに、益々深く浸食していく。
やっと二人の唇が離れた頃には、息も絶え絶えといった体で理真の身体からクタリと力が抜けた。いつの間にやら、理真の身体はソファに横たえられている。すぐ真上から理真を見つめる岳の視線は、どこまでも甘く、その奥には情欲が潜んでいた。
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