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「もう離すつもりはないよ。誰が、何と言っても」
誰が何と言っても自分の意思を押し通す。それが、桐島岳だ。そんなことはもう知っている。
理真を手に入れる、岳が本気になった時から、逃げられるはずはなかった。
いつの間にか心の中に入り込まれ、当たり前のように居座り、自分でも気付かないうちに深く侵食されていた。
「離れたく……ない」
掠れた声でそう呟く。こんな風に思うことなど、一生ないと思っていた。
岳は表情を歪め、額と額とを重ねる。
「それも反則。可愛すぎて、どうしようかと思う」
今にも泣きそうな顔で、岳が理真の頬に手を添える。
「初めて会った時、雪のように白くて綺麗な肌だなって見惚れた。頭が良くて、隙がなくて、どうやって近づけばいいのか考えながら、作ってくれた資料を見てた。そしたら……ビックリするくらい丁寧で、僕らみたいな素人にもわかりやすくまとめられていた。それを見て、この人は、実はものすごく思いやりがあって、優しい人なんだと思った。相手の立場になって物事を考えることのできる、僕にはないものを持った人なんだと思った」
「……言いすぎです」
理真からすると、一体誰の話をしているんだと思う。しかし、岳の視線はずっと理真から離れることはない。
「言いすぎじゃない。まだ……足りないくらい」
岳は理真の髪に触れ、優しく梳く。そして再び口付けを落とした。
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