未知との遭遇

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「……こちらで全て完了となります」  視察スケジュールは、予定時間よりも少し早めに終わる。やれやれといったように、理真はゆっくりと頭を下げた。 「後ほど疑問点などが出た場合は、メールでご連絡ください。私から回答させていただきますので。本日はどうもありがとうございました」 「こちらこそ、ありがとうございました」  真崎がにこやかな表情で頭を下げる。岳も、それに倣うようにぺこりとお辞儀した。 「ありがとう、理真ちゃん。楽しかったよ」  無事に任務を完了できたようで、理真はホッと胸を撫で下ろす。その隙を狙ったように、岳が理真の耳元に唇を寄せた。 「メッセージするから、よろしくね」 「!」  近い距離、そして小声で囁かれ、理真は飛び上がりそうになる。岳は真崎に小言を言われる前にすぐに離れ、手を振った。 「咲ちゃんにもよろしくー」 「すみません、氷上さん。ありがとうございました。それでは失礼いたします」  困り顔の真崎に、理真も困ったような複雑な表情で「お疲れ様でした」と応える。その一方で、岳は元気いっぱいの顔でエントランスを出て行く。  その後ろ姿を眺めながら、理真はぼそっと呟いた。 「やっぱ宇宙人だ……」  今日はもう早めにあがろう。そして、家でゆっくり休むのだ。そう決意し、理真は自分の職場へと戻っていった。
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