秘め事

3/24
3352人が本棚に入れています
本棚に追加
/202ページ
「だーかーらー……あの時はごめんって謝ってるのに」 「でも、理真さんが私の部屋に泊まった時も、やっぱり寝ちゃいましたよねぇ?」  咲はどうしても理真と一晩中女子トークがしたかったらしく、今度は理真を自分の部屋へ招待した。しかし、理真はまたしても同じ過ちを繰り返してしまったのだ。 「それくらい寝つき抜群な理真さんが眠れないって何ですか? よほどの心配事? 開発スケジュールは今のところ順調だし、心配することなんてありますか?」  仕事は順調だ。こういった研究職の場合、うまくいかないことも多々ある。うまくいかないことの方が多いかもしれない。  しかし、粘り強く続けていれば、ある日突然報われることがあることも知っていた。だから、仕事に関して眠れなくなるほど不安に思ったことはない。 「ねぇ、咲」 「何ですか?」 「桐島さんからメッセージ来る?」  理真の顔を見て、ははーん、といった顔で咲が笑った。 「桐島さんのラブラブ攻撃にやられてましたか」 「あの人、実は暇なんじゃないの?」 「いつも忙しいっぽいことは言ってましたよ。でも、いくら忙しくても理真さんにメッセージする時間は作ってるんじゃないですか?」  そんなもの、作らなくてもいいのにと思う。
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!