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「ちなみにー、私のところへは当日お礼のメッセージがあったくらいで、それ以降は来ないですよ?」
「えっ!?」
驚いて咲を見ると、咲がニヤニヤと笑っている。理真には意味がわからなかった。
視察の日、にこやかに対応し、好意的だったのは咲だ。理真は案内役をやりはしたが、決して好意的な態度ではなかった。いつもどおり、塩対応の『氷姫』だったのだ。なのに、どうして──。
「ランチの時、理真さんはやれやれとばかりに桐島さんを視界から外してましたけど……」
咲に相手を押し付け、のんびりご飯を食べていたことはしっかりバレているらしい。
「だって、お昼くらいゆっくり食べたいじゃない!」
「わかってますよー。だから、二人の相手を買って出たんじゃないですか」
「……助かったわよ、すごく」
バツの悪そうな顔を、僅かに横に向ける理真に、咲はクスクスと笑みを漏らす。
付き合いの浅い人間は、氷姫のこんな可愛い部分は知らない。ツンデレがデレると最強だな、と思いながら、咲は理真の携帯を指差した。
「また来てるみたいですよ、メッセージ」
「もー……」
机に突っ伏す理真の耳元で、咲はそっと囁く。
「理真さんのことばっかりでしたよ。ランチの時」
「えっ?」
理真がガバッと顔を上げた。
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