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「それで、その進み具合や仕事ぶりを見たいってことらしいんだよね」
「はぁ……」
それはまた面倒な、と思いはしたが、会社としては新たな取り組みとなるわけで、やはり気になるのだろうと思い直した。
「お偉方が来るんですか?」
「まぁ……間違ってはいないな」
「は?」
お偉方には違いないが、そうではない……? 藤木の口ぶりはそんな感じだ。
理真が訝しんでいると、藤木は眉尻を下げて白状した。
「実はね、桐島岳さんなんだ」
「……」
理真の表情が何ともいえないものになる。それを見て、藤木は苦笑した。
「氷上さんの最も苦手とする人種だよね」
「はい……」
桐島岳といえば、現『KIRISHIMA』社長の御曹司、そして、制作部部長という肩書を持っている。
しかし、我儘放題、やりたい放題という仕事のやり方に、不満を持つ者が多いと聞く。特に外部。内部ならともかく、外部に悪名高いとはどういうことなのだろうか。
おまけに女癖が悪い。少しでも気に入ればすぐに手を出す、女たらし。人懐っこくて明るい、禍根を残さないさっぱりした人物とも聞くが、全てにおいて軽いのだろう、と理真は思っている。
どうしてやり手社長の息子がこれなのだろう。やはり、二代目というのは甘やかされて育ち、世間の厳しさを知らないのだろうか。
何はともあれ、理真は岳のような人間とは極力関わりたくないと思っているし、関わることなどないだろうと安心していた。
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