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「いつもそんな風に笑ってほしいな」
「……いつもとか、無理です」
すぐにツンな顔に戻ってしまう理真に、岳は肩を震わせた。
「うん、そっか。でも、その方がいいかも」
「は?」
岳は、理真の顔を覗き込むようにして言った。
「理真ちゃんがいつも笑ってたら、ライバルが多くて敵わない。寄せ付けないくらいでちょうどいいよ」
「……っ」
よくもまぁ、こんな気障なセリフを照れもせず言えるものだ。しかし、面と向かって堂々とされると、本当にそう思われているような気がして、頬が熱くなってくる。
「顔、赤いよ?」
「ちょっ……ちょっとだけ、ワインで酔っただけです」
苦し紛れの言い訳に、岳がまた笑う。たまらず理真が横を向くと、拗ねるような声が聞こえた。
「こっち向いてよ」
「……」
「理真ちゃん」
「……」
「ねぇ」
子どもが駄々をこねているような言い方に、笑ってしまいそうになる。理真が観念したように前を向くと、岳がじっとこちらを見ていた。
「桐島……さん?」
「気になった?」
「え?」
何について聞かれているのかわからない、そんな理真の顔を見て、岳がもう一度聞いた。
「気にしてくれた?」
「……何をですか?」
「僕から連絡が来なくなったこと」
「……」
コクッと理真の喉が鳴る。
あれはやはり意図的だったのか。嫌になるほど送られてきたメッセージ、それが急に鳴りを潜めると、どうしたって気になってしまう。告白の後だったので、尚更だ。
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