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「あははは! うん、そう言われてるみたいだね。実際、否定はできないかもしれないな。でも……」
岳が再び理真の手を握る。理真が岳の顔を見ると、岳は真剣な眼差しで頷いた。
「信じて。僕は一人に決めたら、余所見はしない。皆からいろいろ言われるのは…………惚れっぽいから」
上がって……一気に落ちた。それは、奈落の底まで。
「いや、それが女好きだって言われる理由ですよねっ!?」
「あはははは!」
本気なのか遊んでいるのか、さっぱりわからない。こんな岳を見ていると、やはり信用できないと思ってしまう。
しかし、ひとしきり笑った後、岳は大きく息を吐き、項垂れる。
「……って、ごめん。ふざけてる場合じゃないんだけど、ちょっと僕も調子狂ってるんだよね」
そう言って、岳が戸惑いの表情を見せた。初めて見るその顔に、目が離せなくなる。
岳は少し弱ったような表情で、理真の手を引いた。そして、やんわりと理真を抱きしめる。
「こんなに興味を持ってもらえないのに、振り向かせたいと思う。誰かにこんなに執着するのは初めてなんだ」
岳の腕に力がこもる。掠れた声が、切なく響いた。
「手に入らないと思うと……よけいに欲しくなる。だから……」
「それを否定はしないよ。でも、そういうんじゃないんだ」
身体を離し、理真と視線を合わせる岳は真剣だった。
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