絡まる糸

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 ***  会社の人間に会わないよう、少し遠出をする。  比較的人が少なく、小洒落たカフェに腰を落ち着け、理真と奈都はランチプレートをオーダーした。  まずは食事を済ませてからということで、二人は黙々とプレートを平らげていく。時折言葉を交わすが、すぐに会話が終了するような、そんなものだった。  食後のコーヒーが運ばれてきた時、やっと奈都が本題に入る。 「あれこれと回りくどいのは好みませんので、単刀直入に言わせていただきますね」 「はい」  熱いコーヒーにそっと口を付けた後、理真が頷くと、奈都は何の躊躇いもなく言い放った。 「岳さんと別れてください」 「……は?」  理真の目が点になる。コーヒーカップを持ったまま、固まってしまった。硬直している理真をよそに、奈都はどんどんと話を先へ進める。 「岳さんと私は結婚を間近に控えております。なので、もう岳さんとは会わないでいただきたいんです」 「あの……」 「『KIRISHIMA』と一宮グループが手を組めば、今後更に大きな事業展開が期待できます。うちの両親も、この結婚には大賛成で、できるだけ早くと願っております」 「……」  一宮、どうりで聞いたことがあると思った。一宮グループとは、多方面に事業を展開する一大企業グループだ。奈都はそこの令嬢ということになる。  それはいいが、岳と結婚するとはどういうことなのか。そんな話は一切聞いていない。 「私も早く岳さんと一緒になりたいと望んでおります。ただ……肝心の岳さんが話を先延ばしにして、はっきりとお返事をくださいません。それで、少し調べてみましたところ、あなたのことを知ったというわけです」
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