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「そりゃ寝坊するわけないよ!発売日、毎日カレンダーにバツつけながら楽しみにしてたんだから!」
「グロリア、ほんとこのシリーズ好きだよね」
「そりゃもう!」
メルの言葉に、勢いよく頷くグロリア。
「ファンタジー小説もいろんな流行があるけど、やっぱり俺は“努力と友情で勝利をもぎとる!”みたいな王道の話が好きなんだよなあ。この話もさ、二人共魔法の才能はあるんだけど、全然戦闘ともなれば完璧じゃないじゃん?ヒロインのクラリスは剣の腕はすごいけど回復魔法とかは全然得意じゃないし、逆にヒーローのカレンは魔法に長けてるけど体力がなくて戦闘で走るのが苦手だろ?お互い補いあって強大な敵に立ち向かっていくってのがさ、また燃えるというかしびれるというか……!」
そこまで語って、グロリアははっとした。ミツルギ、メルと同じようにレジに並んでいた者達(殆どが同じように、ベリーメールの世界の最新刊を手に持っている若者ばかりだった)がみんな揃ってこちらを振り返り、見つめているではないか。
人前であることも外であることも忘れて、思わず熱が入ってしまった。真っ赤になって萎むグロリアに、これもいつものことだと大笑いしたのがレジの前に立っている書店の店主、シュレインである。
「はいはい、そんなに焦らなくても本は逃げないからね。あ、買ってくれるならちゃんと持ってレジに並んでおくれよ、お会計できないからねー!」
なお。この直後、グロリアは己のバッグがからっぽで、財布を家に置き忘れてきたことに気付きさらに恥を上塗りすることになるのである。
「相変わらずドジでそそっかしいな、グロリアは」
結局ミツルギが呆れて、本の代金を貸してくれることになったのだった。クールだし皮肉も言うが、こういうところが憎めない奴なのである。
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