< 第一話 ー起ー >

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 ***  グロリアとミツルギ、そしてメルが並んでいると、よく周囲には“三色団子みたいだ”なんてことを言われる。理由は簡単、自分達の髪が見事に色鮮やかでバラバラであるからだ。グロリアは茶髪、ミツルギは黒髪、メルはピンク。それがどうにも、お団子屋さんで売っている三色団子そっくりであるらしい。数年前に異国からやってきたという団子屋のおじさんの店には、グロリアも何度か足を運んだことがある。確かに、自分達の頭はお団子そっくりかもしれない。食べたら美味しそう、だなんんて周囲に思われてるんじゃなかろうな、なんてことを思うグロリアである。 「あー、帰って読むのが楽しみだなー」  川沿いのベンチ座ってサンドイッチをほおばりながら、これもいつもの流れと三人仲良くおしゃべりタイムである。初等部からの仲である自分達は、なんとなく気があって学校の外でも一緒にいることが少なくなかった。ミツルギは一見皮肉屋だが、根は真面目だしとても頭がよく面倒見がいい。そしてメルは、女の子だけれど気取らず飾らず、むしろこざっぱりした性格なので非常に付き合いやすい存在だ。  三人揃って本好きというのも大きいだろう。特に、今回購入した長編『ベリーメールの世界』に関しては新刊が発売されるたび考察し分析し、感想や意見を交わし合うのがいつもの流れだった。 「今回の表紙、てっきりいつもどおりの順番で行くとまたクラリス一人の絵になると思ってたのに。今回は、クラリスとカレンが二人並んで座ってるんだなあ」  中身は非常に気になる。気になるが、今ここで本を開くのはぐっと我慢なのだ。なんといっても、表紙や裏表紙の情報からだけでも読み取れることはごまんとある。特に、ベリーメールの世界シリーズは主人公二人を交互に表紙に載せるのがいつものパターンだったのに、記念すべき十巻では二人共が並んでこちらに背を向けて座っているではないか。これが何を意味するのか、と思うと非常に興味深いところである。 「ずっと仲間割れしていた二人が、ここで和解するようになるってことなのかな?確かに、前回からの流れでクラリスがカレンの過去をついに知る!ってところで終わってるけど」  お嬢様ゆえ頭が硬いところもあるが、根はとても優しい少女であるクラリス。自分を大事にせず、無茶ばかりするカレンのことを非常に心配するようになっていた矢先に事件が起きて――という流れである。以前のようにただいがみあっていた二人ならともかく、今のクラリスならきっとカレンの心の傷に寄り添えるだろうと思うのだけれど。 「勿論それもあるだろうが。ただ和解する、ってことではないと俺は思うな」  見ろ、と言ってミツルギが指差したのは、並んで座っている二人のイラストの真ん中だ。  彼らは月明かりの下、丘の上で座ってどこか遠くを見ている様子なのだが――真ん中、と言われても特に何かがあるようには見えない。グロリアもメルも、顔を見合わせて首をかしげてしまう。ミツルギは、一体何を見つけたというのだろう。
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