240人が本棚に入れています
本棚に追加
皇后様の頼み事
とある日の午後。
その日、小蘭は、皇后様に呼び出された。
覇皇帝の正妃である皇后様は、後宮の最大の権力者で、慣習戒律にとても厳しいと評伴の御方。
規律を冒し、悪さを働く者には氷のように無表情のまま、容赦なく、厳しく断罪するという…
自室を訪ねた宦官から、その勅を受けた小蘭は、食事をとるのも忘れて戦々恐々としていた。
ただでさえ、竹簡を持った宦官が訪ねてくる状況は、トラウマものなのに…
「よいですか、決して粗相をなさいますな」
婆やなどは、しつこく何度も何度も小欄言い含めた末、しまいには今生の別れのように、涙ながらに故郷の歌を歌い出す始末。
いったい私がどんな悪さをしたっていうの?
小蘭にとっては心外だ。
確かに、小蘭が普段きちんと決まり事を守っているかといわれれば嘘になる。しばしば授業をサボって春明先生のところに入り浸るわ、たまに変装して出歩き行方不明になるわ、凛麗達に言われたように蒼龍を自分の部屋に引き入れるわ(小蘭曰く、『これは私の意志じゃない!』のだが)…など、心当たりにはきりがない。
それをもって、後宮の規律を乱す極悪妃と言われたらそこまでだ。
最初のコメントを投稿しよう!