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序章
その腰の折れ曲がった宦官は、唐突に部屋の戸口に現れた。
巻いた竹簡を縦長に広げ、朗々と謳うように読み上げる。
「____以上、勅である」
「承知、致しました」
「…………」
膝をつき、かしずいて頭を垂れたまま、私はそれを拝命する。
彼は、クルクルと竹簡を巻き上げると恭しく一礼し、無言のままヒョコヒョコと来た方向へ去ってゆく。
「ま、まあ……大変!」
室の奥で、ぽかんと口を空けていた婆やが、右往左往し始めた。
「そんな…信じられない。
まさかまさか、うちの小蘭様についにお声がかかるなんて!」
彼女はひとしきり騒いだ後、ウキウキと衣装やお化粧の準備にとりかかる。
それとは対称的に、私はがっくりと肩を落としていた。
嘘。
まさか私に、白羽の矢が立つだなんて。
それだけは
それだけは絶対に無いと思っていたのに__
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