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虹色に飛び散れ。
「ほ、本気で言って――いや、正気で言ってるんですか?」
思わずそう言い直してしまうほど、先輩の言葉は俺にとって狂ったものだった。
ただでさえ暗くて今にも逃げ出したいのに、その上更に目を閉じて――完璧な暗闇の中に堕ちろと言うのか。
抗議しようとして、俺は先輩を睨みつけようとする。
だけど、二人の目が合ったとたん――そんなことはできなくなった。
「大丈夫。私を信じて」
へちゃ先輩の瞳は、暗闇の中でも微かに輝いて。
絶対的な自信に満ちていて。
絶対に、悪意なんてなくて。
だから。だから。
俺は、ゆっくりと手を伸ばした。
二人の手が重なりあった。
先輩の手は柔らかくて、とても暖かった。
そして、
俺は。
恐る恐る、目を瞑った。
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