二人だけの秘密

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二人だけの秘密

「お疲れ様。お前らも早く帰れよ」 そう言って出ていった木村所長。 小さな設計事務所の中には、 後輩の山森くんと私の二人が残されていた。  山森くんは、私より2歳年下の27歳。 軽くウェーブがかかったショートヘア。 顔は童顔。笑うとえくぼが左頬に出るので、かなりチャーミング。 山森くんの見た目は、いわゆる可愛らしいワンコ系の男の子の王道だったりする。 私はといえば、背が156cm。 小さめの背の上、童顔。 ストレートヘアだけが自慢。 いつも若く見られ、 嫌なクライアントに ナメられることもしばしばある。 清楚でおっとりだとみられがちだが 性格は、結構捻じくれている。 自覚しているから、まだ救いがあると 自分で思っている。 ドラマや小説に出てくる主人公みたいに 可愛らしくて、素直で みんなに愛されるような優しい天然キャラだったら良かったのに! と自分でも がっかりしてしまう。 そんな私には当然ながら ここ何年も彼氏がいない。 いわゆるご無沙汰デーの女だ。 斜め向かい側へ視線を飛ばすと、 パソコン画面に向かっている真剣な山森くんの表情が見れた。 ―――わーかわいい。山森くん。やだっ、見てよ、もうっ、真剣な顔してるし。 仕事をしている時は皆真剣な顔なのは当たり前なのに、山森くんだと、どの表情も新鮮でかわいい。 山森くんの圧倒的な可愛らしさに癒され、ふっと微笑んで私もパソコン画面に視線を移した。 少しの間、仕事に集中していたから すぐ近くに山森くんが来ていた事に全く 気がつかなかった。 「お疲れ様です。結衣さん」 山森くんは私を下の名前で呼ぶ。 そう呼べと指図したわけでも命令したわけでもない。 見上げると、珈琲のカップを二つ手にして山森くんが立っていた。 出てるっ、可愛らしいえくぼ。 「ありがとうね。山森くん」 山森くんが、カップを私に渡そうと差しだしてきた。 カップを持つ山森くんの指先に 受け取ろうとした私の指がすこしだけ 触れてしまった。
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