二人だけの秘密

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「送りますね。傘ありますから」 目の前に見えている山森くんのイケメンフェイスに腰が砕けそうだ。 だって、それこそ生唾ものの可愛らしい癒しの笑顔だったから。 ―――送る? そんな展開今までなかったじゃん。 やだっ、山森くんって、まさか私の事を好きだとか? ものすごく妄想癖の高い私は、送ると言われただけで勝手に ものすごく期待値を上げて 山森くんを見つめ ごくりと生唾を飲み込んでいた。 ―――まさか、送るって家まで来て そのまま……なし崩しに あれよあれよと言うままに…… 家まで送ると言われた訳でもないのに だんだんと膨らむ妄想。 「そろそろ……帰りましょうか」 山森くんに、こんな風ににっこりと微笑まれたら、思わずこちらもにっこりと微笑まずにはいられない。 にっこりしてみせた途端、山森くんが赤い顔して目を見開いた。 「結衣さんっ、その笑顔反則!!」 「えっ、なに?」  訳がわからずにあたふたする私。 そんな私の肩を山森くんが がっしりと掴んでしまう。 今、当然の成り行きで真正面から山森くんと向かい合う形になっている。 ーーーわわわわー恥ずかしいっ。 全身が否応なしに熱くなってくる。 「いいですか、結衣さん! そんな顔で男を見るのはダメ。そんな笑顔は 僕だけに見せてくださいねっ」 有無を言わせぬ口調だ。 「はいっわかりましたよ。だけど急にどうしたのよ、山森くん」 山森くんが私の両肩から手を放した。 「結衣さんが……いけないんです」 「は?」 「送り狼になったら、結衣さんのせいですからね」 「わたしのせい?」 「そうですよ。結衣さんが……」 私から視線を外して山森くんは、ボソボソッてつぶやいている。 「可愛すぎるんですよっ。 困るんだよなーー、あんまりかわいいと 本気で送り狼になりそう」 ーーーやだっ、送り狼だって。 山森くんの心の声がだだ漏れ。 送り狼上等。大好きなんだけど、イケメンから送り狼への変貌。 見たいっ、絶対に見たい。 それに、私をかわいいって言ったよね。 マジなの、それ。 からかってる? からかわれるのは、嫌い。 山森くん、本気で言ってるのー? 私は若干疑いの眼差しを山森くんへ向けながらも既に心は有頂天になって顔の筋肉が緩みまくっていた。
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