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妄想の扉
妄想の扉
オフィスを出ると、空からふんわり降ってくる白いものを見上げた。
掌で白い物を受け止める。
静かに音も無く透明な液体になる。
「初雪だね」
音を立ててワンタッチの傘を広げる山森くん。
紺色の大きな傘。
「結衣さん、どうぞ入って下さい」
「ありがとう」
申し訳程度に傘に入る私。
歩き始めると、山森くんは
明らかに私の方へ傘を傾けていた。
「山森くん、濡れちゃうよ。傘もう少しそっちへやっていいから」
私の言葉に山森くんは、肩をすくめた。
「じゃあ、こうしましょうか?」
山森くんの手が私の肩に置かれ、山森くんの胸のあたりにぐいっと引き寄せられてしまう。
「あっ……」
ーーー肩に手がまわったっ!
はやっ、もう送り狼に変貌?会社から出たばっかりなのに。
餓え狼だったのかしら?
嘘みたいに近い近い。
近いって山森くん!
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