妄想の扉

1/4
前へ
/80ページ
次へ

妄想の扉

妄想の扉 オフィスを出ると、空からふんわり降ってくる白いものを見上げた。 掌で白い物を受け止める。 静かに音も無く透明な液体になる。 「初雪だね」 音を立ててワンタッチの傘を広げる山森くん。 紺色の大きな傘。 「結衣さん、どうぞ入って下さい」 「ありがとう」 申し訳程度に傘に入る私。 歩き始めると、山森くんは 明らかに私の方へ傘を傾けていた。 「山森くん、濡れちゃうよ。傘もう少しそっちへやっていいから」 私の言葉に山森くんは、肩をすくめた。 「じゃあ、こうしましょうか?」 山森くんの手が私の肩に置かれ、山森くんの胸のあたりにぐいっと引き寄せられてしまう。 「あっ……」 ーーー肩に手がまわったっ! はやっ、もう送り狼に変貌?会社から出たばっかりなのに。 餓え狼だったのかしら? 嘘みたいに近い近い。 近いって山森くん!
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

467人が本棚に入れています
本棚に追加