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ー…ポリポリ…。
己の象徴を、気持ちよさそうにイジる少年は、さっきまで自分を苦しめていた連中が、死んでいったのが愉快だったのだろう、その表情は悪魔のようにニヤリとしていた。
「…あ…ああ…」
男には、恐怖に続き、疑問も生まれた。これまで感じていた少年に対する殺意も、身体を失う恐怖も、忘れてしまう程の、疑問が。
あの時、さっきまでは、確かに、普通の子供だった。
只、この「国」を、今の状態にした俗悪な輩の血統である以外は、何処にでもいるような普通の子供だった。
なんの力もない、ましてや、自分たち大人に歯向かえるような力など、まるで持ち合わせていない、丸裸に剥かれても抵抗すら出来ない非力な子供だった。
それがどうだ、今や大の大人数名をただの肉片に作り替え、今もまた一人をバラ肉と挽肉に作り替えている。
しかも、こいつはそれを高志空拳でやってのけている。
おれは、こいつを化け物と言わず、何と言おう…
…こいつは、一体何者なんだ…?
こいつは…何時から…化け物…だったんだ?
こいつは…人間…じゃ、無いのか…?
「じゃあ…いま、おれの、目の前、に、いる…あの…ガキ…は…」
ー…バキバキバキ、グシャッ。
これが、男の最後の一声だった。
かつて複数の男だった「モノ」は、バラバラに切り刻まれ、まるでスーパーの生鮮コーナーで出されているようなバラ肉やスライスハムのようになり、その内一人に至っては、頭部がまるでトマトが潰れたように全く原型を残していなかった。
唯一その場に立っているのは、一度は男達の手で虐げられ、刺され、無残な姿にされた、一糸纏わぬ姿の少年只一人のみとなった。
「…ざまぁみろ」これまで無言だった少年は、物言えぬ肉片となった狂人達を見て、吐き捨てた。
ーぷしゃああ…。
その肉塊に、少しだけアンモニア臭のする多量の、黄金色の透明な液体が降り注がれる。
ーツー…。
少年の眼からも、一筋の涙が伝う。
「…仇とったよ、母さん…ううっ…あははっ…あはははは…」
一人生き残った少年は生まれたままの姿で、物言わぬ屍を前に、垂れ流しながら勝ち誇り、泣きながら声高らかに笑った。
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