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…そのはずだった。
『…ちゃん…痛いよぉ…』
途中で映像は、暗転と共に阿鼻叫喚の惨状に一変する。黒く、暗く、光も届かない薄汚れた檻の中に、先ほどの男の子が、全身汚れと、傷だらけの姿になって横たわっていた。髪もあの時の美しさを失い、煤に塗れてボサボサになっていた。
また、暗くてよく見えなかったが、彼が一糸纏わぬ姿なのはすぐに分かった。
『はぁ…はぁ…いい…あいつ、いいおっぱいしてるぅ…』
『見ないでぇ…あたしのハダカ見ないでよぉ!』
『寒いよぉ…だれかぁ、助けてぇ…』
他の檻には、多くの子供たちが、しかも皆性別や年齢層お構いなしに、かつ彼と同じく素肌をさらけ出した全裸で入れられている。檻の中には布切れ一枚すらなかったのだろう、その多くが、恥部を手足で隠していた。中の様子も様々だ。一人はただ蹲って、一人は大声で泣いて、一人は他の投獄者をオカズに…とにかく、一人ひとりの個性が、文字通りあられもない姿で表れており、その状況はまるで、家畜として飼われている豚や牛のようだった。
ただ、それは少女にとって問題の一つにしか過ぎなかった。
もう一つ、気になる事があったのだ。
―鳥さん…?
子供たちは皆、身体のどこかに黒い鳥の姿をかたどった痣が在ったのだ。個人個人で痣がある場所も、その痣の形も、濃さも違っている。
だが、男の子だけは、何処に痣があるかが見えなかった。顔にあるのではと思ったが、ボサボサの髪が、邪魔で見えない。しかもこの暗さだ、他の子供にある痣だけでも見るのに苦労したのに、確認しようにも眼が慣れてこない。
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