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―許せない…こんな子に、あんな事をするなんて…!
男の子を苦しめる奴らに対する、怒りが、込み上がってくる。
男の子への悲しみも、押し寄せてくる。
心の中の溶岩が、今にも噴火しそうだ。
―こんなのもう嫌だ…見てられない!
この地獄から、助けてあげたい。
救いに行きたい。
今すぐに。
この足で。
この手で。
この声で。
―なのに、どうして、助けられないの?
傍に行きたくても、行けない。
伸ばした手も、空を切る。
したくても、出来ない。
声も、届かない。
どうしても。
どうやっても。
何もすることが出来ない。
何度やっても、彼を助けることは、叶わない。
―…嫌だ…嫌だよ…
目の前にいる子供を助けられない絶望感と、そんな自分に対する嫌悪感。
そんな感情が、少女の心を満たした。
ズキッと、胸も痛んだ。
そうこう考えているうちに、男の子は白装束の連中とは違う、迷彩色の服を着た複数の大人達に連れていかれる。
―…待って!
少女は男の子と、彼を連れて行く大人たちを追っていった。
置いて行かないで…ただそんな解釈では片付けられない感情が湧き上がる。届かないと分かっていても、少女は男の子に手を伸ばす。
その思いが通じたのか、少女は段々と男の子に接近していく。
届いて。
届いて欲しい。
もうすぐなんだ。
もうすぐ、あの子にたどり着ける。
ボクはただ、あの子を助けたい。
助けたいだけなんだ。
だから、待って。
待ってよ。
行かないで。
置いていかないで。
ボクを――――――。
だが映像は、暗転と共に幕を閉じる。男の子の生死を知ることが出来ないまま、悪夢は終わってしまった。
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