62人が本棚に入れています
本棚に追加
数分後。
「なばっちゃぁぁぁぁぁぁん!!」
ターミナル駅に着いた歌音と藍良。息も絶え絶えの二人の眼前に開業しているクレープ販売店。
どうやら、目的地にどうにか着いたようだ。
「ひっひっふぅー、ひっひっふぅー、どぉ~にか間に合ったぁ~」
「あいちゃん、息遣いが下品だよ」
無事着いて一安心の二人。
「いらっしゃぁーい、二人とも」
「奈橋」の名札を胸に付けている販売員の焦げ茶色の髪を持つ若い女性が、顔を出す。
エプロンで隠れているが、二人よりもフラットな体格だ。
「藍良、いつも別の店でバイトしてるのに、ウチにも来てくれてさ、アタイも嬉しいよ」
「まあ、その店のも好きだけど、クレープはここのが気に入ってるんだ、毎日でも来ちゃうよ」
ここは商売敵とも言える店だが、藍良には関係ない。
心からお気に入りの店なのだ。
歌音も、
「ほ~れ、ちっち~」
と、店の前にいる看板猫や看板犬達と戯れながら、
「はーい、ちょっとうんち片づけるよー」
これらの客寄せ動物や、様々な生物が店前でした排泄物を、店前に常備してあるホウキとチリトリで処分していた。
チリトリに入った便は、これまた店前に置いてあるゴミ箱に入れられる。
「あ~、あんがとね歌音、チビ達の片付けてくれて。本当助かってるわ。『店前でウンコするな!』、『片付けてくれた人は全品半額』って張り紙してるのに、どいつもこいつも言うこと聞かないからさぁ」
奈橋から感謝される歌音は、やはり店前に設置してある手洗い場で手を洗った後、傍にあるアルコール消毒液を適量出し、手に塗り込む。
「なばちゃんがこういうの苦手だって言ってたからね、お互い様だよ。ぼく達だって綺麗なお店でクレープ食べたいもん」
「だねぇ、いつか保健所に訴えられちゃうかもね、ここ。もしそうなったら、こっちも訴えてやるかも」
二人はその理由も知っていた。
奈橋は若い頃、色々とあったらしく、そのせいで排泄物、特に仕事以外で大便を見ると直ぐに吐いてしまう。
そのせいで、奈橋は排泄物を片付けられないのだ。
「この店が和式のしか無かったら、多分、ここで働くこと無かったかも…」
「あ~、うんち見えちゃうし、付いちゃうもんねぇ」
「なばっちゃんさぁ、ウチの歌音だからやってあげてんだよ。他の人は絶対にやってくれないんだからさ、人のはとにかく、せめて動物のフン位見れるようにしといてね」
「はーい」
「なばちゃん、ぼくやあいちゃんと違って、ウロコさんみたいにおっぱいペタンコなんだから、しっかりしなきゃダメだよ?」
「あ~い、重ね重ね気をつけまぁす」
談笑しあう客二人と店員一人。
最初のコメントを投稿しよう!