一:練成者達の出逢い

21/74
前へ
/424ページ
次へ
 「おい、そこの…赤毛にショート」  誰かの呼びかけに我に帰る二人。  その声の元に振り返ると…。  「あっ…」  そこにいたのは、長い黒髪と、紅色の瞳が美しい、自分たちと同い年くらいの少女だった。  モデルのように手足はスラリと長くスラックスやジーンズが映え、出るとこも出ている。  特に胸は藍良が(歌音程ではないが)生唾をゴクリとするほどだ。Eカップ位かなぁ。何かで見たような気もするが…う~ん、突然すぎて思い出せない。  でも何で、息を切らしてるんだろ…。  藍良はこれは応えないと失礼だと思ったのか、「はっ、はい、何ですか?」と、少女に尋ねる。  「ちょっと、気になってな…」  若干よろつき気味の少女が「ほれ」と、少し顔を赤くしながら、持っていたビニール袋から何かを取り出す。  「…まだ口は付けてない、やるよ」  「っ、コレ…」  藍良の顔に笑みがこぼれる。  眼前には、少女の手にあるクレープ、しかもそれもバナナやイチゴ、キウイ…とにかく沢山のフルーツがふんだんに乗っている。しかも二つ。  「あっあの、これ、良いんですか!?」  「いいんだ…自分の分はちゃんとあるから」  「自分の分って、彼氏とか?」  「い、いや、居候とその悪友だ。あんまりイタズラが過ぎるんで、ちょっと喝入れたくてな」  うわぁ、容赦ねぇなぁと思いつつ、藍良はクレープを受け取る。  しかし、何で同性に話しかけてるのに顔を赤らめてるんだろう。目も剃らし気味だし。  「あっ、ありがとうございます…でも、お代…」  財布を取り出そうとする藍良を見て、少女は首を振る。  「いや、いい。それ目当てで来た訳じゃない」  何と寛大な…ありがたやぁ…。  藍良はクレープを眼前に運び、心の中で拝んだ。  「…あ、でもそのお二人の分は…」  「ああ、そうだな…じゃ、代わりのヤツを買うか」  少女はレジに向かい、途中歌音の顔を見つめる。二人は一瞬目が合い、既視感があるかのように反応した。  「また来てくれていいことしたのに、ごめんね、もうイナゴしか無いんだぁ…」   「いや、ちょうどいい」  この人が残りのクレープ買ってたからイナゴのしか残ってなかったのか。  で、何処かですれ違って申し訳なくなって戻ってきたって訳ね…。  フン嫌いでド無乳の店員と、ナイスバディの客のやりとりを見て、納得する藍良。  そして少女は、×印の無いメニューを指差した…。
/424ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加