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「イナゴのやつ二つ。ああ、イナゴ二倍、いや全部でもいい」
…って、うおおおおいっ!!
少女のトンデモ注文に、藍良は愕然とした…中々のチャレンジャーだよこの人、よくそんなこと言えるもんだよ!あたしだったら無理だって、誰に頼まれても絶対無理だよ!歌音や院長に買いに行かせる?特に無理!!大体何でこの人虫とか平気なのかなぁ!?神経どこかおかしくない!?ま、まぁ、そりゃぁ初対面っつてもいい人だけどさ、だからってそれは無いでしょ、ねぇ!?しかも今頼んだの人に食わせる物だよね、いっくらなんでもやり過ぎでしょ!あ~、あの人平然と受け取ってる。つーかもうあれゲテモノの花束じゃん!クレープじゃないじゃん!もうなんか色々はみ出してるし…。
「…あの人ドSだわ」
もう、苦笑いするしか無い藍良。
この件は何も語れないと思い、歌音の方に目線を戻す。
「この人凄い人だって思わない、ねぇどう思う、歌音?」
藍良は歌音に問いかける。
だが歌音は答えない。
「あ…あっ…」
歌音は眼を強ばらせていた。
…似ている。
あれは女の人だが、夢に出て来るあの少年によく似ている。拷問され、手足をもがれ、眼を潰され、死に絶えかけたあの少年に。怖い。関わるのが怖い。でも何だろう。気になる。彼女の事が気になる。まずは、話しかけてみようか、ならば最初は、何から話しかけようか、髪綺麗ですね…ベタ過ぎる。おっぱい大きい…自分はあいちゃんみたいなヘンタイさんじゃない。じゃあおちんちん付いて…何を見ていたの、相手は女の人だって!う~ん、何て言えばいいのぉ!?あの人お会計終わっちゃうよぉ…。
「歌音!」
「フェッ!?」
藍良の呼びかけに我に帰る歌音。
「どうしたのよ一体、あの人と会った途端目ン玉点にして黙っちゃって。あと、はいこれ。後でちゃんとお礼言いなさい」
藍良は、少女から貰ったフルーツクレープを歌音に手渡す。
「まあ、似てるだけだよね、だってあの人の体に付いてるのおっぱいだし」
歌音の一言に藍良は「そういう風に見えなかったけど?」と言いたかったが、止めた。これはあくまで歌音が自らの力で解決すべき問題。自分が深く関わってはいけない。
そう、彼女と、自分自身のためにも…。
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