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時間は午後18時、遊びきった二人は家路についていた。
空は暗く、満天の星が見え始めていた。
その証拠として、
「あいちゃん、ここら辺あんまり悪い人出ないからって、おっぱいの痣、気を付けなきゃ駄目だよ」
「は~い、今後気をつけま~す」
藍良の胸元の痣が、白く光っていた。
実はあの痣は、暗い時間になると白く光るようになっているのだ。
歌音も、夢の中で痣が光っている所を見ているので、よく知っている。
本人は、時計とスマホの他、この痣で今日のような日の帰宅のタイミングを計っていた。
「おーっ、歌音ちゃんと、藍良ちゃんじゃないかぁ、気ぃつけて帰れよ~」
「はーい」
「皆さんも無理しないでくださいねー」
周りでは、業者や集まった有志が、朝の間にポイ捨てされたゴミを回収していた。
基本は缶やペットボトル、雑誌、タバコの吸い殻だが、
中には…、
「ね、ねぇアレ…」
「歌音、見ちゃダメ」
グチャグチャになった肉から骨がはみ出している、動物の死骸、しかも食用だけでなく犬や猫といった明らかな飼育動物も混ざっており、他のゴミと一纏めにする。
おまけに重機を持ち出せない様で、粗大ゴミは鉈やのこぎりを使って解体、小分けにしてから運んでいる。
回収する人も渋い顔をしている。
「あと、マッポ共、人死にが出ないようにせいぜい頑張んな~」
「あいちゃん、そういう事言っちゃダメ」
その場には、何十人もの警察官も。
恐らく、町の清掃を邪魔する暴徒から清掃員達を護るために出動したのだろう。
「ったく、あたしら州民の為に精一杯尽くしてくんなきゃね」
先程とは打って変わって、憎しみの眼差しで警官を睨む藍良。
「ごめんなさいお巡りさん、あいちゃんにはよく言っておきますから…」
申し訳なさから、警官にペコペコと頭を下げる歌音だが、藍良の彼等に対する態度は理解できた。
藍良は、警察と自衛隊を酷く嫌っていたのだ。
愛禁法があった頃、警察と自衛隊は国民の生活を圧迫し、剥奪し、制限していた。教科書にもしっかりと記載されているし、写真も載っている。
歌音は以前から感づいていたが、藍良は彼等の事を快く思っていない。彼女本人は教えていないが、恐らく孤児院暮らしであることに関係しているのだろう。
(けど、このままじゃ良くないよね…)
藍良が、彼等のことを恨むのは仕方ないとは思うが、このまま偏見を抱いたままでは、彼女の為にならない。
一方で、今の藍良にそれを指摘しても火に油を注ぐもの。いくら自分相手でも決して聞きはしない。ずっと過ごしてきたから分かる。
(今は、そっとしておこう…)
歌音は、黙って藍良の態度をなだめた。
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